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資源循環社会実現に向けた取り組み

資源循環社会実現に向けた取り組み ①水資源

 三ツ星ベルトグループは、環境保全に取り組むことを重要な経営課題の一つと位置づけており、「水資源の保全」にも注力しています。

 水道水が飲料水として使用でき、かつ低コストで入手できる日本では、水資源の保全に対する意識が薄れがちです。実際に、三ツ星ベルトグループの国内生産拠点は、主力製品である伝動ベルトの生産量が海外生産拠点の1/3に過ぎないにもかかわらず、海外生産拠点の約2.5倍の水を使用しています(2022年度時点、図を参照)。しかしながら、日本では水の問題がないかというと決してそうではなく、日本においても毎年どこかで“渇水”が発生しています。

 一方、海外に目をやれば、2022年にヨーロッパを襲った熱波・干ばつは、農業生産に大きな負の影響を与え、さらには原子力発電所の冷却水温度上昇によって電力供給にも影響が及びました。

当社が行っている水資源の保全に関する取り組みは、地球温暖化による気候変動に対応する取り組みと密接に関連しています。水は、私たちが生きるために欠かせない重要な資源でありながら、その重要性に反して水の枯渇や汚染が進んでおり、私たちの社会生活、経済活動、自然環境に深刻な影響を与えています。

 三ツ星ベルトグループは、水の枯渇や汚染が社会に及ぼす影響を深く認識しており、事業活動における水資源の保全に努めてまいります。



ガバナンス

 三ツ星ベルトグループの「水資源の保全」に関する取り組みは、当社のマテリアリティ「環境保全への取り組み」の課題の一つとして取り上げられ、その実施状況をサステナビリティ推進委員会が監視・評価しています。

サステナビリティの推進体制
リスクマネジメント



戦略

 「水資源の保全」に関するリスクと機会を洗い出し、それらが三ツ星ベルトグループの事業活動に与えるインパクトについて、他の事業課題と共にリスク管理規程に準拠して評価し、その結果を戦略と目標に展開いたしました。

リスクと機会の洗い出しおよびインパクト評価結果


 
 シナリオ分析の結果、「気候変動による干ばつ」および社会環境の変化に伴う「水ストレスの上昇」は、三ツ星ベルトグループの生産活動における「取水」に影響し、対応を怠れば「製品供給の遅れ」につながり、適応できれば「製品の安定供給による顧客信頼性の獲得」につながると判断しています。更に、水ストレスが高い地域で生産される「綿」を原材料として使用した場合、強制労働により生産された綿同様、不買運動につながりかねないリスクを有しています。一方、干ばつ対策として実施される、効率的な水資源の活用を目的としたダム、ため池、用水路等の整備が進展すると予想され、これらに活用される「遮水シート」およびその施工サービスに対する需要の高まりが期待されます。なお、SSP1-2.6シナリオ、SSP5-8.5シナリオに沿った「干ばつ」に関する分析結果、SSP2 RCP4.5シナリオ、SSP3 RCP8.5シナリオに沿った「水ストレス」に関する分析結果を、「干ばつ、水ストレスに関するリスク分析・評価」に詳述しておりますのでご参照ください。

 生産活動の停止による財務インパクトは、グローバルな生産補完システムが機能することによって、連結ベースでの影響は非常に軽微なものとなりますが、生産拠点単独ベースでは、停止期間に応じた売上高の減少が見込まれます。

 また、「干ばつ」に伴う用水事業活性化による遮水シートの売上高は、これだけを分離して見積もることは難しいですが、これを含んだ建材事業全体の売上高の伸びは、2023年度、2020年度比10.5%増の63億円/年を見込んでいます。



指標と目標


 これまで三ツ星ベルトグループでは、日本に比べ取水環境の厳しい海外生産拠点を中心に、水の消費量を減らすために「冷却水循環システム」、「ミスト冷却システム」等を導入してまいりました。ゴム製品の生産においては、化学反応によりゴム弾性を発現させる“加硫”工程が不可欠ですが、この工程では、ゴムに硫黄等を加え、高温(100℃以上)で反応させるため、“加硫”後には冷却が必要であり、水を使用して冷却します。以上のように、“加硫”と“加硫後の冷却”は、ゴム製品を作るために欠かせない工程です。

 2019年度には、当社グループ・北米の生産拠点エム・ビー・エル(ユー・エス・エー)コーポレーションにおいて、「冷却水循環システム」を導入いたしました。同システム導入前後の水使用量の推移を図に示します。導入前では、年間約7万㎥の水を使用していましたが、同システムの導入により、年間水使用量を3万㎥弱まで減少させることができました。 

 前述の通り、当社グループ・国内生産拠点の水使用量は、海外生産拠点の約2.5倍であり、特に国内生産拠点における水使用量の削減が急務となっております。表の目標を設定し、水使用量の削減に取り組んでまいります。



干ばつ、水ストレスに関するリスク分析・評価

表)「水資源の保全」に関するリスク分析

 三ツ星ベルトグループの生産拠点ごとの「干ばつ」および「水ストレス」のリスクを分析、評価しました。

 「干ばつ」リスクは、生産拠点の所在地により変化するため、World Resource InstituteのAqueduct Water Risk Atlasから、現在の「干ばつ」リスク情報を入手し、これにIPCCの気候変動情報を加味し、各生産拠点の現在およびSSP1-2.6、SSP5-8.5シナリオに沿った2050年、2090年の「干ばつ」リスクを評価し、5ランクで表示しました(表 水資源の保全に関するリスク分析/リスクが高い:5⇔リスクが低い:1)

 
 国内7生産拠点の、現在の「干ばつ」リスクは、【ランク:2】であり、2050年、2090年の「干ばつ」リスクは、どちらのシナリオで気候変動が進行したとしても、そのランクは変化しない分析結果となりました。日本における生産において、「干ばつ」リスクは気候変動の影響をほとんど受けず、リスクの低い状況が世紀末まで継続すると判断しています。

 一方、海外8生産拠点の現在の「干ばつ」リスクは、1拠点が【ランク:3】、他の7拠点は【ランク:4】に位置し、国内拠点に比べリスクがやや高い状況となっております。また、2050年、2090年の「干ばつ」リスクは、どちらのシナリオで気候変動が進行しても、現在のランクから変化しない分析結果となりました。海外生産拠点は、日本と比べるとやや高い「干ばつ」リスクを有していますが、既に、冷却水循環システムやミスト冷却システム等の対策を講じており、安定した操業を継続できています。また、世紀末まで現在の「干ばつ」リスクが変化することはないという分析結果より、冷却水循環システムやミスト冷却システム等の展開は進めるものの、差し迫った対応の必要はないと考えています。

 他方、「水ストレス」リスクに関しても、生産拠点ごとに、World Resource InstituteのAqueduct Water Risk Atlasより、現在およびSSP2 RCP4.5、SSP3 RCP8.5シナリオに沿った2030年、2040年のリスク情報を入手しました。リスクの表示は、「干ばつ」同様に5ランクで行っています。

 国内7生産拠点の、現在の「水ストレス」リスクは、【ランク:1~3】に位置し、綾部事業所を除き、2030年、2040年の「水ストレス」リスクは、どちらのシナリオをたどったとしても、【ランク:3~4】に悪化します。海外8生産拠点においても、5拠点で「水ストレス」リスクが現在に比べ、2030年、2040年に悪化する結果となりました。特に米国、中国、シンガポール、インドネシアの生産拠点では【ランク:5】まで悪化します。「水ストレス」リスクを悪化させる主な原因は、「人口増加」、「気候変動」、「水紛争」と言われています。日本のように、食糧自給率の低い地域が食糧を輸入した時、「食糧生産に要した水」を輸入したと判断し、「水ストレス」が増加します。このように「水ストレス」を悪化させる原因は、地域の社会環境により様々に変化するため、「水ストレス」に関する基本的な対応施策を「水消費量の削減」とし、地域ごとの社会環境変化を確実に監視・評価することで、地域ごとに適時適切な対応をとっていきたいと考えています。

 さらには、「水ストレス」リスクの調査範囲を、サプライヤーチェーン全体へ広げた結果、当社が使用する原材料の一つである「綿」の生産地域と「水ストレス」の高い地域とが、インド北西部で重なっていることが確認できました。この地域の水ストレスは【ランク:5】に位置付けられていますが、上記どちらのシナリオをたどっても、幾分改善されるものの、【ランク:4】を超えては改善されません。「水ストレス」の高い地域での綿花の栽培は、水の使用量だけでなく、農薬による環境汚染も問題となっていることから、今後、調達ガイドライン等において水資源の保全に関する活動の実施を明確にしたうえで、サプライチェーン全体で「サステナブルコットン」への切換等を進めていきたいと考えております。