環境
Environment
生物多様性保全の取り組み
生物多様性保全の取り組み
個人、企業、地域、そして社会全体が自然環境から得られる恵み「生態系サービス」のうえに成り立っています。生きるうえで不可欠な酸素、水、食物、生活を豊かにしてくれる住居、衣類などこれら全てが生態系から提供されています。そして、太古より生態系を安定的に維持させてきたのが「生物多様性」です。現在、この生物多様性が人類の活動による地球温暖化、環境汚染、乱開発、乱獲等により急速に失われ、生態系の維持が危機的な状況にあります。今、対応を怠れば、将来、生態系サービスを享受できないことにより社会全体が大きなダメージを受け、SDGsが目指す「持続可能な社会」が実現できなくなります。
このような状況下、日本政府は、2022年12月に開催された生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)における「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の採択を受け、2023年3月、「生物多様性国家戦略2023-2030」を閣議決定いたしました。この中で「2030年 ネイチャーポジティブ」、つまり「2030年までに、生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せる」ことを目標として定めています。
三ツ星ベルトグループは、これまで地球温暖化の抑止に向けてGHG排出量削減活動に取り組んでまいりましたが、生物多様性の損失も、個人、企業、地域、そして社会全体にとって、地球温暖化と同程度の重要性・緊急性のリスクであると認識し、2023年度、マテリアリティ「環境保全への取り組み」の課題の一つとして「生物多様性の保全」を取り上げ、具体的な施策・KPIを設定のうえ、種々の活動に取り組んでいく計画です。
戦略
「生物多様性の保全」に関するリスクと機会の洗い出し、また、それらが三ツ星ベルトグループの事業活動に与えるインパクト評価については、サステナビリティ推進委員会において、TNFD※1が推奨する開示フレームワークに従って実施し、その結果を戦略と目標に展開いたしました。
また、先述の通り、生物多様性を脅かす要因の一つに地球温暖化による「気候変動」があげられており、これに関する戦略と目標は、「脱炭素社会実現に向けた取り組み」に詳述しておりますのでご参照ください。
・脱炭素社会実現に向けた取り組み
事業活動地域と生態系との関係
先ず、三ツ星ベルトグループの製品ライフサイクルを考慮した事業活動地域と、生物多様性の保全にとっての重要地域の接点を調査・特定しました。具体的には、事業活動地域として、①三ツ星ベルトグループの14生産拠点の所在地域、②原材料である天然ゴム・綿花の生産地域、③原材料・エネルギー源である原油の生産地域を選択しました。生物多様性の保全にとって重要な地域には、生態系の完全性が失われつつある「ホットスポット」※2と呼ばれる地域、絶滅危惧種の保護が必要とされる地域(AZE site※3)、水ストレスの高い地域※4を選択しました。
「ホットスポット」と接点を持つ事業活動地域 |
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AZE siteと接点を持つ事業活動地域 |
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水ストレスの高い地域と接点を持つ事業活動地域 |
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三ツ星ベルトグループの生産拠点において、生産活動における水消費および排水・排気・廃棄物による環境汚染が生態系に強く影響すると考えています。また、天然ゴムの生産では土地利用による森林破壊が、綿花の生産では栽培に要する水消費、農薬による環境汚染が生態系に強く影響すると考えています。特に天然ゴム、綿花については、既に国際的な環境課題として取り上げられ、その改善に向けていくつかのイニシアティブが立ち上げられており、三ツ星ベルトグループの事業活動の中では、最優先で取り組むべき課題であると考えています。
※2 ホットスポットとは、1,500種以上の固有維管束植物 (種子植物、シダ類) が生息しているが、原生の生態系の7割以上が改変された地域のことです。
※3 AZE siteとは、生物多様性イニシアティブAlliance for Zero Extinction にて開示されている、地球上で最も絶滅が危惧されている 1,483 種の個体群が最後に残っている地域のことです。
※4 水ストレスの高い地域は、World Resource Institute がAqueduct のWATER RISK ATLAS にて開示されている ”Water Stress” において、”Extremely High” に分類された地域としました。
リスクと機会、シナリオ分析、戦略
三ツ星ベルトグループの事業活動地域と生物多様性の重要地域の関係および下記表1に示したシナリオを考慮して、洗い出したリスクと機会およびその対応施策を表2にまとめました。シナリオの内容は、開示されている生物多様性に関するレポートやWorld Resource InstituteのAqueductから得られた情報を三ツ星ベルトグループ内で検討し、2030年と2050年における自然環境と社会の状況に展開しました。
表1 生物多様性の保全状況から見た近未来のシナリオ
生物多様性が保全されるシナリオ | 生物多様性が喪失するシナリオ | |
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2030年 |
生物多様性が保全されるシナリオ
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生物多様性が喪失するシナリオ
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2050年 |
生物多様性が保全されるシナリオ
|
生物多様性が喪失するシナリオ
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生物多様性の保全におけるリスクと機会およびその対応施策は表の通りです。
環境配慮製品の開発に取り組まないことは、新規の事業機会を失うだけでなく、既存の製品需要も減少させるという財務的影響を発生させます。気候変動対応でカーボンフットプリントの大きな製品が市場から排除されるのと同じように、生物多様性の保全に悪影響を及ぼす製品は市場から排除されていきます。例えば、現在、水や農薬の使用を管理し、環境保全に配慮して生産された綿は、「サステナブルコットン」として第三者認証され流通していますが、将来、「サステナブルコットン」のように、どこでどのようにして生産・加工されたのかを明確にした綿やこれを使用した製品が、市場の主流になると思われます。この流れは天然ゴムにも当てはまります。
三ツ星ベルトグループは、綿や天然ゴムを使用しない製品仕様の開発は既に完了しており、今後は、綿や天然ゴムのサプライヤーに対して、先ずは調達ガイドラインにおいて「生物多様性の保全」に関する要求事項を明確にし、生物多様性の保全に配慮した事業活動を行っていただくよう働きかけてまいります。